星をすくう者
アキャーリから少し歩いたところに、二本の椰子の木に渡された、背の高いブランコがある。エスティニアンはブランコに腰掛け、リボン状に結んだ紐の金属を摘んで、するすると引いた。編み上げた紐に指を通して引っ張っては緩め、片足ずつ、すぽんとブーツを…
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イン・ザ・ダーク
黄昏のごとき蝋燭の灯りが闇に深い影を落とす、果てしなく冥い教皇庁・地下。足音は幾重にもこだまし、どこまでも遠く広がってゆく。13段下って右へ折れ、また13段下る。それを繰り返して、今は4度目の13段に差し掛かったところである。目に覆いをさ…
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ソーム・アル・オ・マロンに捧ぐ
食堂は、英気を養う場であるとともに、生き残った者の顔を改めて確認する場でもあった。此処に揃わぬ者はつまり、神殿騎士団病院で集中的に治療を受けなければならないほどの深手を負ったか、戦場で命を落とした者だということになる。 以前、エバーレイク…
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名もなき旅人からの手紙
自宅の書斎にて、アイメリクは肘杖をついて、とろとろと眠る。 久々に訪れた休暇だった。前日は、まだ陽の暮れぬうちから帰れ、帰れとルキアから言われ、今朝は落ち着かず神殿騎士団本部に顔を出してみれば、休め、休めとアンドゥルーから言われ、追い返さ…
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契り
若き神殿騎士団の団員に充てがわれている隊舎は、一部屋一部屋が狭く、二段ベッドと文机があるのみの極めて質素なものである。おまけに老朽化が進み、風が少し吹いただけで窓がかたかたと音を立て、隙間風で蝋燭が揺らめく。アイメリクと同室だった貴族の傍…
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生まれ得ぬ子ども
「ほら、見て。主教様の落とし胤だそうよ。……お若い頃にそっくりよね」「ああ。8歳かそこらだったか。あの子自身は知らないのだったな、己の血について。かわいそうにな……」 もう何度、こうして混乱させられたか知れない。こちらをじろじろと見て聞こえ…
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