何も知らない
邪竜の巨大な鉤爪が、エスティニアンの胸を薄く切り開いた。溢れる血は腹へと流れ、荒れ果てた石畳にぽたぽたと落ちる。その赤い血は、純粋なる人間だったときのものだった。 エスティニアンは、槍を持たなかった。鎧も衣服も全て脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿で…
niddmeric
原罪と自罪 2
2 帝竜の体温『■■■■■■、私を愛してくれてありがとう。 ……だから、行かないと。目の届かないところへ…』 黒髪の女性は、数名からの手引きを受け、風の吹きすさぶ夜のクルザス中央高地に一人、足を踏み入れた。背後で門が重々しい音を…
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